3月29日、バイデン大統領が反リンチ法に署名しました。アメリカのリンチのほとんどは、複数の白人による黒人への暴力行為です。「憎悪」が動機のリンチで相手を殺傷した場合、加害者は最高30年の禁固刑に処せられます。
南北戦争後の1865年に憲法で奴隷制が廃止されると、黒人へのリンチが増加しました。82年から1968年の間に4000人以上がリンチの犠牲になったと推定されています。
1900年代の前半には、リンチを見物した白人群衆と、首縄で木に吊るされた黒人の死体を撮影した写真が、絵はがきとして出回ることもありました。
55年、当時14歳だった黒人少年エメット・ティルさんは、夏休みを過ごしたミシシッピ州で、白人女性を口笛で冷やかしたと言いがかりをつけられ、誘拐されてリンチに遭い、頭を拳銃で撃ち抜かれ、川に遺棄されました。
彼の母親はシカゴで行った公開葬儀で棺の蓋を開けたままにし、エメットさんへのリンチを全国ニュースにしました。彼女の勇気ある行動は、キング牧師が市民権運動へ取り組むきっかけの一つとなりました。

2001年の9・11同時多発テロ 後、「何百年もの間、リンチというテロに脅かされてきた」とする黒人の発言が高まりましたが、リンチ行為を処罰する法律はなく、被害者が泣き寝入りする状況がその後も続いていました。
反リンチ法案の提出が、初回の1900年以来二百回以上に及んだことは、アメリカの人種問題の根深さを物語ります。
エメットさんの死から67年後の連邦法成立。時機を逸した感はぬぐえませんが、ここ10年の正義の平等な実施を訴える市民運動がもたらした、大きな成果の一つと言えます。