米大統領は、合衆国憲法を維持、保護、擁護することを宣誓して正式に就任します。連邦や州の上下両院議員選の当選者、軍人らも同様の宣誓をします。
聖書の上に手を置いて宣誓するのが習慣となっていますが、憲法で宗教の自由が保証されているので、本来は聖書を使う必要はありません。宣誓の言葉だけで十分なのです。
しかし、前例に倣ってか、手を置く物がないと格好がつかないのか、絵本や漫画本、小説などを使った人もいます。

米独立戦争(1775―83年)には、さまざまな側面があります。「王政を拒否し、民主主義を選んだ」ことの正当性がしばしば強調されます。また、米国の精神を表現するものとして「誰も法の裁きを逃れられない」もよく使われます。2年前に私が受けた米国市民権を取得する帰化テストにも住民全員への法の適用に関する出題がありました。
ところが、トランプ大統領は米国で生まれた子どもは「市民」だとする憲法を無視するかのように、米国籍を持つ子どもを不法移民の母親とともに国外へ追放しました。これで、大統領就任直後に浮上した「憲法の危機」が現実となりました。
米国は、宗教や習慣、考え方の違う人たちが住む移民の国です。憲法は、国を一つにまとめている文書であり、国を象徴するものの一つです。このため、「大統領による憲法違反」の可能性は、独立戦争開始以来250年続いてきた民主主義の歴史を否定する大事件なのです。
米国市民が「偉大な実験」と自画自賛してきた民主主義の行方やいかに。