新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が席巻する中、大統領選の投票率が120年来の最高を記録し、アメリカ民主主義の根強さを証明しました。アメリカは真っ二つに分かれていると嘆く人が多いのですが、民主党と共和党がともに約半数の支持者を得て競い合うこと自体は、健全なことです。
ただ気になったのは、コロナの収束よりも経済を優先した人が予想以上に多かった点です。生活に困窮する人たちの、悲痛な声の表れでしょう。
都市部の企業で働く人には大卒者が多く、自宅で就業できる人が多いのですが、都市部周辺や地方は、コロナの経済的打撃をまともに受け続けています。コロナ以前からグローバル化のあおりを受け、製造業の仕事が海外に移転し、失業率が高いままの地域も多いのです。

このため、エリート集団による政治や経済に不信を抱く人が増えました。型破りのトランプ大統領は、彼らに「今までとは違う」希望を与えたのです。
「ザ・ニュー・クラス・ウォー(新階級戦争)」の著者マイケル・リンドは、アメリカを二分する線は人種ではないと述べます。労働組合員が交渉力を維持するために移民の減少を主張すると、エリート層から「外人嫌い」のレッテルを張られるなど、エリート層が労働者層の状況を理解できていないことが、分断の原因だと分析します。
労働者層の声を政治に反映させるのに有効だった産業別組合や宗教組織のルートが弱体化し、労働者層のエリート層への対抗力が低下したと、リンド氏は指摘します。
「国の魂の回復、分断の癒しと協調」をスローガンに掲げたバイデン次期大統領が、置き去りにされた人たちの声にどう応えるか。エリート層をどう動かすか。希望をもって注視したいです。